新卒の就職活動では、沢山の優秀な大学生の皆さんが、外資系企業への就職を志しています。
しかし、新卒入社で「外資系に就職する」のは、実は、全くオススメできません。
外資は、「新卒が輝ける場所」ではありません。
新卒で外資に入ってはいけない、最大の理由。
「新卒で外資」をオススメできない理由はいくつかありますが、そのうち、一番大きいのは、
一言で言うと、「外資は人を育てる場所ではない」からです。
私は、社員数が数万人の日系大手企業 2社を経験し、その後、500人規模の日系中小企業に短期間勤めた後、社員50人以下の外資系メーカーからヘッドハンティングされ、そこで数年働き、その後、未経験でIT業界に飛び込み、今は社員1,000人を超える外資系IT企業で、働いています。
私が経験した外資 2社とも、「外資は人を育てる場所ではない」と痛感しました。
外資系企業の仕組み
そもそも、外資系企業の年収が高い最大の理由は、他の会社から、優秀な人材を「金」で引き抜いているから、です。
年功序列で給与が固定される日系企業には、とても払えないような高年収を餌にして、日系企業から、優秀な人材を引き抜いているからです。「人を育てる」ことに一切のコストをかけずに、既に他社で育った人材を「金で買う」から、給料が高いのです。
実際、私の知る限り、外資系企業で活躍する社員のほとんどは、日系大手企業で活躍してきた、優秀な人材です。
この会社で、スキルを磨いて、成長した人などいません。採用された時点で、優秀だった人たちです。
外資で「新卒」が活躍することの難しさ
大きな会社なので、新卒入社の社員もいますが、新卒でこの会社に入って活躍している人は、1%以下です。
というか、そもそも、新卒で外資に入って、数年後も同じ会社にいる人が、1% 以下です。
理由は、単純。
外資は、「人材を使い捨てる」場所だから。
外資には、5年以上、10年以上、同じ会社にいる人というのが、そもそも、ほとんどいません。
私は、今の会社に入ったとき、人事部との条件面談の最後に、「この会社はワークライフバランスが良いので、お子さんが小さいうちの数年間働くには、とても良いと思いますよ?」と、美人な採用担当の女性社員に、飛びっきりの笑顔で言われました。
ちょっと、怖いな。と思ったのを覚えています。
会社側は、社員を雇う前から、その社員が3年、5年、10年と働くことなんて、最初から期待していないのです。
2~3年も持てば、それでいい、1年で辞めても、それはそれで仕方がない。外資系とは、初めから、そういう世界です。
もちろん、「外資」にも様々な会社があるので、例外はあります。
外資系なのに、多くの新卒入社の社員が10年も20年も働いているような会社は、規模が大きすぎる、外資日本法人としての歴史が長すぎる、などの理由で、そもそも中身は「日系老舗企業」とほぼ同じになってしまっています。
外資系大手の中のほんの一部ではありますが、こういう企業も確かに存在します。
外資で「成長できなかった」新卒がどうなるか
そして、怖いと思ったのが、この「人材を育てず、使い捨てる気満々」という原則は、「新卒の新入社員」にも適用されるということです。
外資に新卒で入って、活躍する人材はゼロではありません。
1%以下ですが、確かに存在します。
ただ、その人たちは、何も教えられなくても、自分一人で、周りから色々なことを吸収して、勝手に育って、勝手に実績を挙げる、超優秀な人に限られます。
逆に、そうでない人は、大学を卒業した後、会社に入ったものの、誰も何も教えてくれない、研修を受けても、そもそも、そこで使われている用語が分からない、マニュアルも無い、引継ぎもない、何も教えなくても、「出来るのが当たり前」だと思われている、自分を採用した上司が退職していなくなってしまう、先輩も辞めてしまって、どんどん人が入れ替わる、自分は何も出来ないまま、時間だけが過ぎていく、、、
気が付いたら、自分の評価は低く、2年もすると「退職勧告」の対象に入れられてしまっている。
そして、新卒で入った新入社員の9割以上は、実績を挙げることもなく、成長を実感することもなく、1~2年で会社を去っていく。。。
こんな状況は、私がいる会社では、特に珍しくもありません。
実は、日系企業のほうが「成長できる」
これは、私の個人的な意見ですが、「外資やベンチャーに入った方が、圧倒的に成長できる」みたいな話は、ほとんど嘘です。
外資に「圧倒的成長」の機会は、ありません。
99%の人たちにとっては。
外資のほうが、入社1年目でも裁量があって、自由に働けるので、急速に成長していく、と言う人もいますが、それは、99% の人には、当てはまりません。
それは、最優秀のトップ層に限った話です。
外資では、「教育」をしないので、日本トップレベルのずば抜けて優秀な人たちは良いですが、99% の人は、落ちこぼれます。
周りがほぼ全員中途採用で、他の会社で優れた実績を積んできた人たちが、既に前の会社、その前の会社で培ったスキルを使って、バリバリ仕事をしている中、そして、そんな周りのメンバーも、毎月誰かが辞め、毎月誰かが入ってきて、次々に入れ替わっていく中で、この前まで大学生だった新卒の新入社員が、1年目からその人たちに負けない実績を挙げるのは、99% 無理ゲーです。
新卒の新入社員にとっての「外資」と「日系大手」
はっきり言って、日系大手企業に入ったほうが、成長の機会は大きいと、私は個人的に思っています。
日系大手企業では、毎年入ってくる100人以上の新卒新入社員に対して、数か月~半年以上かけて、「礼儀とビジネスマナー」「ビジネスメールの書き方の基礎」「営業・マーケティングの基本」みたいな、きめ細かい「新入社員研修」が用意されていて、かつ、周りの先輩に聞けば、何でも丁寧に教えてもらえます。
日系大手企業では、現在でも、新卒一括採用した社員たちを、今後、終身雇用で40年雇う、会社の幹部候補として、長期的に育て上げる、という意思が一応はあるから、こんなに手厚い対応をしてくれるわけです。
もちろん、無駄なことも沢山ありましたが、外資で「何も教えてもらえない」よりは、遥かにマシです。
一部の「超優秀な人」を除いて、新卒では日系大手に入っておいた方がいい
どんな冷たくて厳しい環境だろうと、一人で、自分の力だけで何でもできる、別にクビになっても構わない、と言えるような、絶対的な自信がある超優秀な人なら良いのですが、そうではない、99%の人にとっては、外資なんかに入るより、新卒では、黙って日系大手企業に入っておいた方が、20代の成長機会は大きいと、私は思います。
「20代のファーストキャリアでの成長」という観点で見れば、ほとんどの場合、外資に入るのに比べれば、日系大手のほうが、よっぽど良い環境が手に入るのではないかと思います。
以上は、私の個人的な意見です。
どう捉えるかは、あなた次第です。
新卒の就活については、他の記事にも書いているので、読んでみてください。
以上、お相手は、安斎響市でした。