自慢じゃないが、私はトリリンガルだ。
「トリリンガル」とは?
念のため言っておくが、
「トリリンガル」とは「3ヵ国語を操る能力」のことを言う。
「バイリンガル」が2言語、「トリリンガル」が3言語だ。それ以上だと「マルチリンガル」って呼んだりもする。
私は母国語である日本語の他に、英語と中国語を喋ることが出来る。
「喋る」というのは、「サンキュー」「ニイハオ」「シェイシェイ」みたいな話ではない。
英語を毎日使う仕事を始めて、もう10年以上になる。
10年以上前、20歳の時点でTOEICは950点。その後、海外100か所以上で、ビジネスの実務で英語を使い続けた。今では、会社の記者発表や、雑誌・web記事の取材の際に、日英通訳のプロとして呼ばれるようになった。
中国語についても、学生時代から5年以上、コツコツ地道に勉強を続け、過去には、大手日系企業の上海支社でマネージャーを務め、自分以外全員中国人という部署で数年働いていたこともある。
初対面の中国人と話すと、だいたい「え?あなた中国人ですか?」と聞かれる程度には、中国語を普通に話せる。
こういうことを言うと、自慢のように聞こえてしまうから、本当に気を付けないといけないと思うのだが、
そのくらい、「語学力」に対する日本人のコンプレックスは強く、「3ヵ国語を喋る」というだけで「頭の良いエリート」という扱いをされる。
正直、笑える。
私のようなポンコツ太郎が、「頭の良いエリート」なわけがないのに。
でも、そのくらい「語学力」が持つ、世間一般的なイメージは強い。

「トリリンガル」になって分かったこと
本題に入ろう。
私も、ただ普通に過ごしていて3ヵ国語を喋れるようになったわけではない。
英語にしても、中国語にしても、
合計10年以上にも及ぶ、地道な努力の積み重ねの上に、なんとか今の実力を身に付けている。
決して簡単な道ではない。
私はめちゃくちゃに勉強しまくった。
お金も時間も、相当に投資してきた。
学生時代の数年間は、自分のすべてのエネルギーを「語学習得のため」だけに費やしたと言ってもいい。
そんな私が、
敢えて今日言いたいのは、
「第二外国語は必要ない」
ということである。
これは本当に残酷な話だし、出来れば言いたくないのだけれど・・・
中国語や
韓国語や
スペイン語や
ポルトガル語を、勉強している人たち。
無駄だから、
今すぐやめたほうがいい。

英語以外の言語は、必要ない
英語さえ自由自在に使いこなすことが出来れば、
正直言ってそのほかの言語は、基本的に必要ない。
特に、英語が出来ないのに、中国語やスペイン語を学んでいる人、あなたは数年後、100%後悔することになる。
今すぐ英語を最優先で勉強したほうがいい。
理由は、単純。
世界中で活躍する中国人は、みんな英語を喋るし、
世界中で活躍する韓国人も、みんな英語を喋るし、
世界中で活躍する欧州人やメキシコ人やブラジル人も、
みんな英語を喋る。
英語で事足りるものを、わざわざ現地の言葉で話すのって、何か意味ある?
逆に、アメリカ人と日本人と中国人とインド人が同じプロジェクトチームにいたとして、たまたま自分が中国語喋れるからって中国語で会話なんかされても、アメリカやインドのほかのメンバーが困るよね。
全員の共通言語である「英語」で確認とるのがベストだよね。
そりゃね、
例えば、中華文化を深く深く、真の髄まで理解したいとか、もちろん、上海や北京に長期間住むなら、中国語はあったほうがいいし、
スペインやメキシコに長期間住むなら、スペイン語はあったほうがいいし、ブラジルに長期間住むなら、ポルトガル語はあったほうがいい。
もしそれらの地域に、自分の人生を捧げるつもりがあるのなら、語学を身に付けてもいいだろう。
しかし・・・
ビジネス上の「必要性」があるかというと、それは全く別のお話。
私は、過去10年以上、合計4社のグローバル企業で、海外営業や、国際的なプロジェクト・マネジメントに携わってきた。
しかしながら、自分の特技である「中国語」が武器になったのは、上海に駐在していた時だけで、その他のほとんどの期間、私は基本的にすべての仕事を英語でしていた。
今もそう。
プロジェクトで関わる中国人は沢山いるけど、全員、普通に余裕で英語を喋る。
それどころか、そのうち数人は流暢な日本語を喋るんだから、彼らはすごい。
私は、ビジネスレベルで相当に流暢な中国語を喋れるのだけれど、残念ながら、中国語を話す機会は、今の仕事では基本的に無い。
前の仕事でも無い。
その前の仕事でも無い。

トリリンガルに、戦略的な価値は無い
本当に、中国本土に駐在すること以外、正直言って中国語が必須になる仕事なんて存在しない。
もっと言うと、ほとんどの日系大企業では、中国の駐在員さえ、中国語を喋る必要がない。
優秀な中国人が、みんな日本語や英語を喋るからだ。
あんなに苦労して中国語を身に付けたのに、正直言って、私には、中国語を使う場所がない。
私は、自分と同じように学生時代に中華圏に留学した人を沢山知っているが、10年後もビジネスで中国語を使っているのは、
私の知る限り、40人中、1人か2人くらいだ。
一方で、学生時代に英語圏に留学して英語を身に付け、10年後の今も、ビジネスで英語を使っているのは、
200人中、ほぼ200人全員である。
これには色々な理由があるとは思うけど、
一言で言ってしまえば、「需要の差」だ。
「英語を必要とする仕事」と「中国語を必要とする仕事」との、需要の差だ。
中国語やスペイン語を勉強することに意味がないとは言わない。
言わないけれど・・・
語学を身に付けるのは、並大抵の努力では成し遂げられない。
それにも関わらず、
英語以外の「第二外国語」を身に付けても、投資した分のリターンは無いと思ったほうがいい。
正直言って、中国語なんか学ぶくらいなら、
PythonやSQLみたいなプログラミング言語を学んだほうが、よっぽど建設的だ。
私が仮に今20歳なら、間違いなく中国語ではなくプログラミングに時間を投資すると思う。

ここで、仮に、
いや、でも英語と中国語の両方ペラペラの人なんて、ほとんどいないんだから、
もし、そういう条件の仕事があれば、唯一無二の武器になるのでは?
そんな、甘い考えを持った男がいたとしよう。(例えば安斎という奴だ)
そんな条件の仕事は、無い。
あったとしても超マイナーで、全体の需要が少なすぎるため、中国語に投資しただけのリターンは全く無い。
あんなに苦労して身に付けた割に、
「英語が話せる日本人」の価値と、
「英語と中国語の両方を話せる日本人」の価値は、
転職市場では、
ほとんど差が無いと言っていい。
これには私も結構びっくりした。
私は過去に4回転職している。
合計100以上のポジションに応募していると思う。
でも、私の持っている、
「英語と中国語の両方ペラペラ」という希少価値の高いスキルは、
実は「希少」なだけで、ほとんど「需要」が無いことが分かったのだ。

時代は「マルチリンガル」ではない
珍しければいいってもんじゃない。
世界一、カメレオンの種類に詳しい奴。
世界一、けん玉のアクロバティックな技のスキルが高い奴。
世界一、鎌倉幕府のありとあらゆる事情に詳しい奴。
こんな奴らは確かにすごいかもしれないが、こいつらに降ってくる仕事は無い。
中国語やスペイン語話者も、言ってしまえば同じだ。
いくら、同じスキルを持っている奴が少なかったとしても、需要が無ければ何の意味もない。
時代は、マルチリンガルではない。
時代は、
英語 x IT だったり、
英語 x 会計 だったりしている。
残念ながら「中国語が話せる日本人」なんて、
2020年以降の世界では、ほとんど役に立たない。
英語はオワコンではないが、
正直言って、中国語やスペイン語やポルトガル語を学ぶのは、既にオワコンだと言える。

中国語の習得に、膨大な時間を費やした私から、
2020年以降の、「全てのトリリンガルを目指す人たちへ」、間違いなく言えるのは、これだけだ。
今すぐ、勉強をやめなさい。
外国語は、英語だけでいい。
2つ目、3つ目の外国語に安易に手を出さず、「英語」をしっかりと身につければ、それだけで色々な道が見えてくるはず。
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英語以外の語学を身につける時間とエネルギーがあるなら、その労力は、
英語を徹底的に磨き上げるか、
もしくは、プログラミングや会計資格、MBAなど、別の「キャリアに役立つ」スキルの習得に使った方がいい。
5年後、10年後に、「なぜあんな無駄な時間を・・・」と、
後悔したくないのであれば。
