
こんにちは。安斎 響市です。
最近、Twitterで「マシュマロ」というツールを使って、
匿名の質問を受け付けているのですが、
思った以上に、
「新卒1年目の転職」に関する質問が多く届いています。
例えば、こういうのです。
正直言いまして、私は、
新卒3年以内、
特に「新卒1年目」の転職は、全くオススメしません。
出来る限り、避けた方がいいと思います。
今日はこの「新卒1年目の転職」について、書きたいと思います。
新卒1年目の転職は、さすがに早過ぎる
私が受けた質問の中で、本当に多かったのが、
「今の会社に特に不満はないけれど、より良い会社があれば転職したい」
「環境に不満はないけれど、給与が不満なので転職を考えている」など、
新卒入社1年目で、
「どうしても辞めなければならない理由」があるわけでもないのに、
転職を考えている、という人たちです。
はっきり言いますが、
こういう考えでの転職は、99%失敗します。
よほどの事情が無い限り、
転職はしないほうがいいです。
そもそも、
新卒1年目ということは、社会人歴たったの数か月です。
ほとんど何もしていないのと同じです。
事前に提示された「初任給」通りの給与が出ているのに、
「待遇が不満」と言いだす意味も、ちょっと分かりません。
例えば、
「残業があまりにも多すぎて死にそうだ」とか、
「パワハラが酷すぎて、精神的に病みそうだ」とか、
今の仕事を続けることが出来ない致命的な理由があるなら、仕方ありませんし、
パワハラ・セクハラや、いじめ、過労、といったブラックな環境であれば、
新卒1年目だろうが何だろうが、
さっさと抜け出すべきだと思います。
ただ、「より良い環境」を求めての転職は、
新卒1年目では、
タイミング的に、早すぎます。
新卒1年目の転職が失敗する理由
① ほとんどの場合、年収が下がる
「より良い環境」や「より良い待遇」を求めて転職してもいいのは、
「他社に採用してもらえるだけの経験を積んだ人」だけです。
企業の立場に立って考えてください。
「中途採用」で、
高い年収を提示して人材を採用するメリットは、
・既に他社で教育を受けているので、教育コストがかからない
・他社(競合他社や大手企業)のノウハウや知識を取り込むことが出来る
・新卒採用では採用できない、優秀な「即戦力」人材を採用できる
などです。
社会人4カ月で、ほとんど大学生と同じレベルの人を、
なぜ、わざわざ採用しないといけないのでしょうか?
社会人教育も中途半端で、まだ育っていない、
在籍期間が短すぎて何の知識もノウハウも持っていない、
何の経験も積んでいない「即戦力」とはお世辞にも言えない若い社員を、
なぜ、わざわざ採用しないといけないのでしょうか?
「入社早々転職を考えている」やる気の無い20卒を採るよりも、
ほぼ同じレベルの21卒を、来年度の新卒採用で採るか、
経験のある即戦力の14卒や16卒を、中途採用で採用したほうが、
明らかに企業にとってプラスです。
結果として、
新卒1年目で転職をすると、
たいていの場合は、年収が下がります。
「優秀な人材を安く採用できる」
「人気が無い自社には新卒採用だと来てくれないような高学歴人材を採用できる」
などしか、企業側にとってメリットが無いからです。
今いる会社の年収が250万とか、極端に低い場合は、
転職して年収が上がる可能性が無いこともないですが、
普通に考えると、年収は下がります。
せいぜい、同等の年収です。
たいていの場合、今の企業での1年目のキャリアが無駄になります。
面接に行って、
企業側があなたの想定年収を聞いて、給与明細を提出して、
あなたに「現職よりも高い年収を払う価値」が、一体どこにあるのか?
新卒1年目で転職する人というのは、
「ブラック企業から抜け出したい」など、
給料が下がってもいいからとにかく転職したい、というケースがほとんどです。
新卒1年目で転職して「年収が上がる」なんて、
甘いことは考えないほうがいいです。
新卒1年目の転職が失敗する理由
② 今よりも下のレベルの会社にしか入れない
先ほども言いましたが、
企業側にとって、新卒1年目や第二新卒を採用するメリットとして考えられるのは、
「人気が無い自社には新卒採用だと来てくれないような、優秀な人材を採用できる」ことです。
新卒採用では、どうしても人気があり待遇もよい「大手企業」に応募が殺到し、人材が集まりますが、
その大手企業を数カ月で辞めた「第二新卒」なら、
業界5位、6位の中堅企業でも、採用することが出来ます。
逆に、大手企業、いわゆる一流企業は、
「第二新卒」をほとんど採用していません。
理由は単純。
メリットが無いからです。
大手企業は、社員には基本的に長く働いてもらうことを前提に考えているので、
入社数か月で転職を考えるような20代の若い社員は、必要としていません。
また、他社や他業界の知識・ノウハウを持つ魅力的な社員なら中途でも採用しますが、
何も持っていない「第二新卒」を採用するメリットはありません。
結果として、
新卒1年目で転職をすると、
たいていの場合は、
今いる会社よりも低いレベルの会社に行くことになります。
業界1位の大手企業から、同業界の中小企業へ。
高年収の国内最大手企業から、小規模で待遇も微妙な外資日本法人へ。
そこそこの中堅企業から、「誰でも入れる」零細ベンチャー企業へ。
といった具合です。
新卒1年目の転職は、少なくとも、
あなたのキャリアアップには、ほとんど繋がりません。
新卒1年目の転職が失敗する理由
③ もう次の転職は出来ない
上記で述べた通り、
「新卒1年目」で転職すると、たいていの場合、
年収は下がり、また所属企業のネームバリューも下がります。
そして、
今いる環境よりも良い環境となる保証は、どこにもありません。
今の仕事よりも楽しめるかどうかは、分かりません。
ものすごいパワハラのブラック企業かもしれません。
入ってみないと見えないことは、沢山あります。
それで、私も最初の転職では大失敗しました。
実際に入社するまで、企業の悪い部分が全く見えていませんでした。
新卒1年目で転職して、次の会社に行って、
例えば、
今の会社が、月収14万円で残業200時間の超ブラック企業なら、恐らく、「今よりも良い」環境になる可能性が高いでしょうけど、
今の会社が、そこそこ悪くない待遇と環境なのであれば、次の会社が「今よりも良い」環境になるかどうかは、実際に入るまでは分かりません。
そして、「うわ、最悪だ、転職しなければよかった」と思っても、
もう今の会社には戻れませんし、
さすがに社会人1~2年で、二度目の転職をすることは出来ません。
不可能ではないですが、今後のキャリアが絶望的になると思った方がいいです。
「新卒1年目」の転職はリスクが高すぎる
「転職の自由」とは、
自分の「売り」となる、スキルや経験がある人にだけ、与えられた自由です。
能力や経験のない人に、「自由」はありません。
「マ ーケットバリューがある人間には、自由が与えられる 。
北野 唯我 『転職の思考法』 より抜粋
好きなときに会社を辞めることができるし、好きなところで働くことができる 。」
私は、「マーケットバリュー」とは相対的で恣意的な「価値」で、
かつ、色付け、味付け、盛り付けが出来るものだと思っているので、
「マーケットバリュー(市場価値)を高めよう」という議論はあまり好きではありませんが、
一方で、「何もない」場合は、味付けも盛り付けも出来ません。
何らかの「価値」が、一応ある、という前提です。
この前提でしか、
幸せな転職は出来ません。
「新卒1年目」には、それがありません。
「マーケットバリュー」が一見無さそうに思えても、何とか掘り起こして、色を付けて、
買ってくれそうな人のところに持っていって、上手く売り込めば、転職は成功します。
でも、掘っても掘っても何も出てこない場合、転職は無理です。
私はジョブホッパーで、
過去11年間のキャリアの中で4回転職しています。
しかし、最初の5年間は、日系大手企業1社で働きました。
そこで明確な実績も作っていますし、海外駐在も経験しました。
その5年間の実務経験と、「ほう、あの有名企業にいたのか」という大手の看板があるから、
その後、複数回の転職が出来ているだけです。
「新卒1年目」で転職していたら、とても、こうは行きません。
私自身は、ジョブホッパーですし、
転職はどんどんすればいい、という考えです。
でも、スキルや経験も無いのに、ジョブホッパーになると、
年収はどんどん下がり続け、
転職しても転職しても、仕事は上手くいかず、
恐ろしい未来が待っています。
「戦略」も無しに、
転職を繰り返すのは、
ジョブホッパーではありません。
ただのバカです。
人生一度きり、
何をやるのも、あなたの自由ですが、
自分の人生を、精一杯楽しみながら、
後悔の無いキャリアを、
戦略的に、作っていきましょう。
転職には、
あなたの人生を変える力があります。
良い方向にも、悪い方向にも。
このブログが、
少しでも、そのヒントになれば幸いです。
お相手は、安斎 響市でした。