働き方 外資系企業

外資系企業が社員をクビにする、その時、何が起こるのか。


こんにちは。安斎響市です。

外資ではよく「社員がクビになる」と言います。




それは、本当でもあり、嘘でもあります。




私も、自分が外資で働くようになる前まで、
「外資はパフォーマンスが悪いと、すぐクビになる恐ろしい世界だ」という、
勝手なイメージを持っていました。




しかし、実際に外資に来てみると、
いくら実力主義と言っても、「仕事が出来ない」くらいで、
そう簡単に「社員がクビになる」ことはありません。



もし「仕事が出来ない」が理由で社員を次々にクビにしてしまったら、
あっという間に社員がいなくなってしまって、
とてもじゃありませんが、会社を維持できません。





一方で、私は実際に「同僚がクビにされる」ところを何度か見てきました。




外資系企業で「クビにされる」というのは、どういうことなのか。

今日は、そんなお話です。



外資系で「クビになる人」、
「クビにならない人」。




外資系企業で働いていると、
「人の入れ替わり」のスピードは、本当に恐ろしく早いです。

毎月毎月、誰かが退職し、誰かが入社してくる。


3年も経つと、メンバーの顔ぶれは全く異なるものになっている。




それもそのはず、外資系企業の「平均勤続年数」は、ものすごく短い。


私が所属する外資IT企業は平均1.8年
前にいた外資メーカーは平均2.5年くらいでした。



10年も同じ会社にいる人なんて、ほとんどいないのです。



その理由の一つは、
もちろん「社員が自ら転職でキャリアアップしていくから」ですが、

もう一つの理由は、
外資系企業では、「社員がクビになる」という状況が、時々あるからです。




では、「外資でクビになる」のは、どんな人たちなのか?



一言で言うと、

「人間関係を作れない人」です。




逆に言うと、

人間関係を普通に作れる人」なら、「能力が低い」「パフォーマンスが悪い」くらいでクビにはなりません。



私は外資に来て、

「ここは外資なのに、こんなに低レベルな人材がクビにならないのか.....!!!」と、逆に驚くことが、たまにあります。



では、

人間関係が作れなくて「外資をクビになる」とは、どういうことなのか?


実際の例を幾つか挙げて、少しお話ししましょう。




実例① 外資メーカー Finance Manager




ある朝のことでした。

いつも通り出社すると... 女性のFinance Managerの安田さん(仮名)姿がありません。


そして、なぜか全社員が急に集められて、15分のQuick Meetingが開催されました。

前に立っているのは、見慣れないアメリカ人社員の姿。本社からの出張者...?


そして、人事部長が話し始めます。

「今日は、皆さんに発表があります。では、Mike, お願いします。」


Mike, と呼ばれた大柄なアメリカ人が、はっきりとした口調で言います。


「Yoshiko Yasuda is no longer employed by our company. (安田さんは、もう当社の社員では無くなりました)」


この "no longer employed" というフレーズを何度か耳にしましたが、これは、遠回しに「解雇された」ことを意味していました。

安田さんが使っていたManager用の個室は、その後、Mikeのデスクになり、残された安田さんの私物を、総務の担当者がダンボールに詰めていました。

Mikeは2カ月ほど日本に滞在し、安田さんの後任を採用した後に、アメリカ本社に帰るそうです。


「お疲れさまでした」とか「次の職場でも頑張ってください」とか、会話をすることもなく、ある日突然、毎日一緒に仕事をしていた社員が、一瞬でいなくなる。


前日のお昼、安田さんと普通にランチをしていた私は、結構衝撃を受けました。



確かに、安田さんはManagerとしてそれほど仕事が出来るイメージはありませんでしたが、それを言ってしまうと、もっと仕事が出来ないマネージャーも何人かいる。


一言で言うと、彼女がクビになったのは、「部下との関係を上手く作れなかったから」でした。


部下は女性2人。

その2人、両方が明らかに上司の安田さんを嫌っており、人事部長へ色々と安田さんの悪い噂を吹き込み、アメリカ本社へも「安田さんはダメだ」という報告をこっそりしていたのでした。



部下を御することが出来なかったのと、自分が排除されようとしていることに気が付かず、社内政治を上手くやれなかった、という意味では、彼女は「無能」だったのかもしれません。




実例② 外資商社 Sales Manager




これは、私の知人、石田さん(仮名)の話です。


石田さんは、外資の小売流通業で働くSales Managerです。4年勤めた会社で、いつも通り、仕事をしていました。

人事部長に「石田さん、ちょっといいですか?」と呼ばれ、会議室に行くと....

「ガチャン」

会議室の鍵を閉められ、突然言われるのです。




「石田さんには会社を去っていただくことになりました。これから条件をご説明いたします。」



話を聞いてみると、

半年前に、石田さんの上司である Sales Directorが、アメリカ本社から来た外国人に変わったのですが、石田さんは英語が不得意なため、上司とのコミュニケーションが上手くいかず、

しかも、石田さんと長年仲の悪かった Marketing Managerが、これはチャンスとばかりに彼を辞めさせようと画策し、「いかに石田さんが無能か」を、アメリカ人上司に訴えていたのでした。


一言でいえば、社内政治に負けたのです。



人事部長は、

「君とは付き合いも長いし、助けてあげたかったんだけど... こうなってくると難しくてね、

条件を説明するから、この場で書類にサインをしてもらって、ここで社員証と携帯を返却して、そのまま出て行ってもらえるかね?

悪いが、サインをしてもらうまで、この部屋から君を出すな、と言われている。」



外資を何社も渡り歩いてきた彼も、さすがにその時はギョッとした、と言っていました。




外資系企業では、退職勧告の際に「パッケージ」と呼ばれる、退職条件の提示があります。

大抵は、3か月分の給与だとか、6か月分の給与だとか、多い場合は、1年分、もしくはそれ以上の額を提示される場合もあります。



日本では厳しい解雇規制があるので、いくら外資系企業といっても、

「継続的なパワハラをした証拠が残っている」とか、

「機密情報を意図的に漏らした」とか、

正当な理由が無い限り、一方的に社員を解雇することは出来ません。



その代わり、自分から「辞めます」と言わせるために、金銭的な条件を付けるのです。



彼の場合は、6か月分の給与だったそうで、条件に不満はあったものの、

4年も真面目に働いて貢献してきた会社からあっさりクビにされた屈辱で、頭にきて、そのままサインをして、会社から出たそうです。




このような「退職パッケージ」は、場合によっては、ピンチではなくチャンスなのかな、と私は思います。



半年分の給与が一気に貰えるなら、半年間、働かなくていいわけじゃないですか。

半年もあれば、次の仕事を見つけることは恐らく出来ますしね。



私だったら、逆にちょっとテンション上がるかもしれません。(たぶん私が変わり者なだけですが)






実例③ 外資IT エンジニア




3人目、外資IT企業のエンジニア、平田さん(仮名)の話です。


平田さんは仕事が出来ず、また、愛想が悪く同僚と上手くコミュニケーションが取れず、性格的に、他人をイライラさせてしまう人物でした。

そのため、

「もう、こいつは辞めさせろ」と幹部から上司に指示があり、実は、2年も前からPIP(Performance Improvement Program)の対象になっていました。


もちろん、「仕事が出来なかった」こともありますが、「仕事が出来ないけどクビになっていない」社員は、他にもたくさんいます。

彼の問題は、同僚や上司とのコミュニケーションだったと言えます。




PIP (Performance Improvement Program = 業務改善計画) とは、「ローパフォーマーな社員に対して、業務改善をサポートするプログラム」
と表向きには言われていますが、実際には、「あなたは会社にとって不必要な人間なので、早く次の会社を見つけてくださいね」という意味で、無理難題を押し付けられたり、本人の希望と全く違う仕事を与えて、「自分から辞める」ように促すための措置です。


PIPは、本来、3カ月程度の期限付きであることが多く、3カ月で業務改善が出来なければ、給与を15%カットする等の処分が待っています。

ほとんどの外資系社員は、この3カ月の間に、自分から辞めます。




外資系で働いている以上、最悪の場合クビになる、という覚悟はみんな出来ているので、「戦力外通告」をされた後に、会社にしがみつこうなんて思う人は、あまりいません。





しかし、平田さんは辞めなかった。




PIPが2年も続いているなんて、異例中の異例だと言えます。


給与をカットされても、精神的なプレッシャーを与えられても、彼は、辞めなかった。





こうなってくると、会社側は困ってしまいます。さすがに、「パフォーマンスが悪い」だけで解雇は出来ません。

何とか、本人に自分から「辞めます」と言わせる必要があります。







そこで白羽の矢が立ったのが、組織変更で隣の部署と合併したことにより、2カ月前に平田さんの上司となった、西村部長でした。



この2カ月の間の、西村部長から平田さんへのパワハラ的な態度には、

凄まじいものがありました。





「パワハラをすれば即解雇される」はずの会社で、

「パワハラも就業規則違反も、悪いことは何もしていない」平田さんを辞めさせる、そのためだけに、

「意図的なパワハラが行われ、黙認される」というのは、非常に恐ろしいことだと思いました。



そして、平田さんは、ついに耐え切れずに、退職届を出しました。




コロナ影響で転職が難しくなっている、この2020年に、

次の仕事も決まっていないというのに、このタイミングで、会社を去らざるを得なくなったのでした。




当時、私は、「平田さん、凄いなあ。ITエンジニアは、コロナの状況下でも強気で転職するんだなあ」なんて、のんきなことを思っていましたが、



ある時、西村部長が発した一言で、ゾッとしました。



「いやぁ、うちの幹部からすると、2年前からずっとクビにしたかった人材で、俺も上から結構強く言われてたから、

もう、退職までこぎ着けただけでよくやった

ってことで、御の字なんだよね。ハハハ。


平田さんをクビにできれば、空いた枠で新しい人を雇えるからね。 

 
だから、彼がいなくなって一時的に多少業務に支障が出るとしても、上も目を瞑ってくれるから、チームに空いた穴は、気にしなくていいからね」






私は、ただ、怖かったです。


この会社も、部長も、その上の人たちも。




外資系企業が社員をクビにする、その時、何が起こるのか。


いかがでしたでしょうか。



外資にも「仕事が出来ない」人は沢山います。

「仕事が出来ない」程度でクビになることはありません。




ただ、いざ「クビ」が決まったときは、なかなかドラマティックで恐ろしい展開が待っている、というのが、いくつかの外資系企業で私が体験したことです。




日系企業に長年勤めた私からすると、

「退職のあいさつ」も、「送別会」も、「寄せ書きの色紙」も無く、

ある朝、突然社員が消えている、

本人の連絡先も分からないので二度と会うことも無い、


というのは、なかなかの衝撃でした。



やはり、外資系企業においては、5年後、10年後も自分の席があるなんて思ってはいけないし、日々様子を見ながら、次の会社に移るタイミングを常に考えないといけないのだ、

と、本当に思い知りました。



まあ、日本企業にも「追い出し部屋」はありますし、外資のようにズバッとキレのあるやり方ではないにしても、




日系企業でも、

「全く希望していない未経験の部署・職種に異動させる」

「結婚した直後に地方転勤の辞令を出す」


「閑職に就けてモチベーションが下がるように仕向ける」


などは普通にあるので、



実は、実態は、外資も日系もほとんど変わらないのかもしれません。







ちょっと、怖い話でした。







安斎響市、夏の怪談。
これにて、おしまい。






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