
こんにちは。安斎 響市です。
就職活動や転職活動の際には、
よく、
「福利厚生が大事だ」
「年収だけでなく、福利厚生を見ないと」
「大企業は、福利厚生が良いから安心だ」
などと言いますよね。
この「福利厚生」って、
そもそも何なのでしょうか?
今日は、そんなお話です。

「福利厚生」は、人件費の調整弁。
結論から言います。
福利厚生は
「調整弁」です。
何を調整するものかというと、
「人件費」などのコストす。
社員を雇用し続けるために
長期的に発生するコストを、
会社側が、ある程度自由にコントロールするために
存在するのが「福利厚生」です。
そんなアホな、と思ったあなた。
確かに、突飛な話に思えるかもしれない。
「福利厚生」という言葉を辞書で引くと、
下記のように記載があります。
企業が、労働力の確保・定着、勤労意欲・能率の向上などの効果を期待して、従業員とその家族に対して提供する各種の施策・制度。主として従業員の生活の向上を支援する目的で実施されるもので、法律で義務づけられた法定福利(社会保険料の事業主負担など)と、企業が任意で実施する法定外福利(交通費・社宅・健康診断・育児支援・保養施設など)がある。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
一般的に「福利厚生が良い」と言うとき差すのは、
「法定外福利」のほうだと思います。
よく求人概要に「雇用保険・健康保険完備」などと書いてる会社がありますけど、正社員に対して社会保険料を会社が負担するのは、法律で定められた義務ですからね。
上に書いているように、
労働力の確保・定着、勤労意欲・能率の向上などの効果を期待しているのであれば、
「保険に入れます」と言われても、そんなの当たり前すぎて、定着や意欲向上にはつながらないと思います。
一般的に、私たちサラリーマンが、
「おお!素晴らしい!」と感じる福利厚生と言えば・・・
① 住宅手当・家賃補助
② 家族手当・子ども手当などの各種手当
③ グループ会社団体保険などの団体割引
④ 社員旅行や社員向け保養所施設
⑤ 退職金や社員向け持ち株制度など
⑥ カフェテリアプラン等の割引制度
こんなところだと思います。
このほか、「交通費」を福利厚生と呼ぶ企業もありますが、はっきり言って、通勤交通費が全額出るのは当たり前ですし、
むしろ、今の時代、交通費よりリモートワーク可などのほうが遥かに魅力的だと言えるでしょう。
そして、上記の①~⑥、
実は、ほとんどは、
会社側都合のコスト調整でしかなく、
労働者側にとっては、
あまり意味がありません。
どういうことなのか。
ひとつずつ、説明しましょうか。

① 住宅手当・家賃補助
まず、
「住宅手当:月xx万円」
「借上げ社宅として家賃補助:xx万円/月まで」
といった住宅費用に対する手当です。
これは、一見、
非常~~~~に魅力的に見えます。
が、
ぶっちゃけ、無意味です。
なぜ、会社は、
従業員に「家賃手当」などという形で
お金を渡していると思いますか?
一言でいえば、
「会社の経営上の節税のため」と、
「支給対象社員を絞ってコストを下げるため」です。
まず、
単純に給料として月6万円を社員に払うよりも、
家賃12万円の借り上げ社宅に社員を住ませて、その家賃の5割=6万円を会社が毎月負担する、という方法のほうが、
会社が支払う社会保険料などが節約できます。
会社にとって得だからやっているのです。
必ずしも、社員の為ではありません。
ぶっちゃけ、家賃補助が月6万円出るより、
給料を手取りで月6万円上げてくれた方が、社員にとっては良いに決まってますよね?
その6万円増えた分を家賃に充てるのか、ほかの何かに使うのかを自分で自由に決められる方が、いいですよね?
「うちの会社は借上げ社宅制度があるから素晴らしい」と言ってる人、
本当にそうなのか、よく考えたほうがいいです。
そして、残念ながら、
2020年現在、どんな大手有名企業でも、
無条件に社員全員に住宅手当が出る、
という会社は、ほぼ存在しません。
まあ当たり前ですね。
福利厚生の目的が労働力の確保・定着、勤労意欲・能率の向上などの効果なら、社員全員の給料を上げた方がよっぽど効果は高いはずです。
それが出来ないから、単純に給料を上げるのではなく、わざわざ「手当」という形にしているのです。
私がかつて勤めていた大手有名企業では、
「借上げ社宅の家賃補助」が使えるのは、
20代の独身の間のみ最長5年まで
会社都合で転勤した際の最長5年まで
などと条件が決められていました。
過去には、結婚した際に住める「厚生社宅制度」もありましたが、コスト削減のために、既に廃止されてしまいました。
就活や、転職活動をしている際に、福利厚生欄に「住宅手当」と書いていたとしても、
実際には、恩恵を受けられるのは、
20代の数年間のみ、
もしくは、
特定の条件を満たした場合のみです。
社員全員ではなく、条件を満たした一部の社員にだけ、
「給与」ではなく「手当」として払えば、
「福利厚生が良い」というお得感を演出しつつ、
全員の給料を上げなくていいのでコストは削減できますからね。
私も20代の頃はそれでも有難いと思ってましたが・・・
今思うと、そもそもの給料が低かったので、完全に会社の思惑通りに「この会社は良い会社だ」と錯覚していただけだったな、
と思います。
実はそれ以前に、大前提として、
「転勤時に家賃補助する」って、
自分で「自分が住む場所」さえ選べずに、奴隷のように会社に人生を捧げている代わりに、
お金貰ってるだけですからね。

② 家族手当・子ども手当などの各種手当
これも、①の家賃補助とほぼ同じです。
繰り返しになりますが、
会社が、
なぜこんな制度を用意しているかというと、
「会社の経営上の節税のため」と、
「支給対象社員を絞ってコストを下げるため」です。
管理会計上、
「給与」ではなく「福利厚生費」に計上することが出来れば、会社側の負担が減りますからね。
私は、過去に勤めた中小企業で、
「子供手当」が、月2,500円 だったことがあります。
犬か!!
うちの犬だって
月2,500円じゃ全然暮らしていけねえぞ。
馬鹿にしてんのか!!
と思いましたね。マジで。
その他、大手有名企業でも、
○○手当:5,000円/月
○○手当:8,000円/月
など、細かく手当てがありましたが、
全て、「全員支給」ではなく「支給対象を絞ってコストを下げる」のと、
「項目によっては、税金などが有利になる」というのが理由です。
すべて、会社側の都合です。
社員の為ではありません。

③ グループ会社団体保険などの団体割引
続いて、生命保険や医療保険などの、
大企業のグループ社員向けの団体割引制度。
敢えて言えば、
「福利厚生」として本当に意味があるのは、
このような保険などの「団体割引」くらいだと、私は思います。
これは単純に、
社員が何万人もいる大企業だからこそ出来る、
「団体加入」に対する割引なので、会社の規模が大きければ大きいほど有利です。
これも、ぶっちゃけ給料が良ければその方が嬉しいのですが、会社側の都合というより、保険会社に大人数で加入していることによる純粋な恩恵で、
個人で加入するのに比べて、圧倒的に条件も良いため、実は私も、これは魅力的な福利厚生だと思っています。
ただ・・・
実は、この「団体保険」、
社員だけでなく「元社員」でも加入できます。
私自身も、6年前に辞めた大企業のグループ保険に、条件が良いので現在も加入し続けています。
この事実は、大企業の、ほとんどの現役社員は知りません。
「うちの会社は給料はそれほど高くはないけれど、団体保険などの福利厚生がいいから・・・」と言っている先輩がいますが、
その保険、転職して給料上げた後でも、普通に入れます。
確かに、団体保険には「大企業の福利厚生」という恩恵はありますが、
それを理由に「この会社は素晴らしいから、転職しないでずっとここで働こう」と思う必要は全くありません。
団体保険の割引はキープしつつ、
シンプルに給料上げた方が、
幸せになれると思います。

④ 社員旅行や社員向け保養所施設
これは、もう説明しません。
社員みんなで行く「社員旅行」とか、
社員だけが使える「保養所」を、
素晴らしい福利厚生だ!!と言って、
有難がっている人は、
もう、正気じゃないです。
完全に「大企業」に染まっています。
「社畜」です。
正直言って、
アホ過ぎて説明するまでも無いので、
ここでは割愛します。

⑤ 退職金や社員向け持ち株制度など
次に、「退職金」や「持ち株会」などの
給与・賞与以外の金銭的待遇の話です。
「退職金」は、その会社に60歳、65歳、70歳など定年まで勤めることを100%信じて疑わないのであれば、良い制度だと思います。
私が過去にいた日系大企業では、
「転職」などで退職する場合、
入社一年目からコツコツ積み立てた退職金は半分消える、定年まで働かない限り全額はもらえない、
という仕組みでした。
どこの会社も似たようなものだと思います。
退職金の制度は、
当然ながら「終身雇用」「定年退職」を前提にしています。
ぶっちゃけ、私のような転職して年収大幅に上げた人からすると・・・
退職金を満額貰うために安い給料で我慢して何十年働くって・・・なんか本末転倒じゃないの??と思ってしまいます。
完全に、「退職金」制度自体が、「転職」を想定していない、時代遅れの設計です。
実は、外資に転職すると、多くの会社では、「企業型DC」という仕組みがあります。
今話題のiDeCoは「個人型」の確定拠出年金ですが、
「企業型DC」は、その名の通り「企業型」の確定拠出年金で、日系企業のように「転職すると半分に減ってしまう」などのリスクが無い状態で、会社がコストを支払って、「退職金」のように60歳で受け取れる資産形成が出来ます。
今後、60歳以降まで今の会社で働くことが「確定」しているなら、日系企業の退職金でもよいのですが、
「転職」という選択肢を持っておきたいのなら、日系企業はさっさと卒業して、「企業型DC」のある会社に転職した方が、
後々、困ることが無いと思います。
また、社員向け「持ち株制度」に関しても、
昭和の頃の、日本企業の株価が上がり続けている状況なら、非常に魅力的な制度だったと思います。
過去形です。
いくら「お得」に株を変えたところで、自社の株価が上がらないなら、あまり意味はありません。
そして、ご存知の通り、
日本企業は過去30年以上、成長していません。
2020年には、「日経平均株価が30年ぶりの高値」と話題になりましたが、
裏を返せば、30年前の株価を一瞬超えただけです。
制限が色々と多く、手続きが面倒な上に、長期的に成長の期待も出来ない大企業の「持ち株」なんかにお金を出すより、
自分で株式投資をするか、ベンチャー企業や外資系企業でストックオプションやRSUを貰った方が、よっぽど資産形成としてはマシだと思います。
ちなみに、
この記事では「福利厚生は会社都合の調整弁」と言っていますが、「ボーナス」も、まさに「調整弁」です。
毎年定められた金額を支払う「年俸制」よりも、
「ボーナスxヵ月分」というのを、その年の会社の業績次第で、会社都合で細かく調整できた方が、会社の経営上、遥かに都合が良いですからね。
うちの会社はボーナスが6カ月もでるから優良企業だ!!と言っていた人たち・・・
2020年はコロナによる業績変化で、思い知ったのではないでしょうか?
ボーナスを当てにするのがいかに危険か、ということを。
ボーナスは、会社都合で幾らでも減ります。
年俸制の会社のほうが、明らかに安心です。

⑥ カフェテリアプラン等の割引制度
続いて、最近流行りの「ベネフィット・ステーション」などの、
カフェテリアプラン型の福利厚生の話です。
社員は一人一人それぞれライフスタイルが違うのだから、
一律に○○手当などを与えるよりも、社員自らが豊富なメニューから選んで使えるほうが、社員にとって良いはずだ!!
と言われれば、もっともらしく聞こえますが・・・
思い出してください。
だったら給料上げろよ!!!笑
なんで給料は上げないで、
「カフェテリアプラン」みたいな、回りくどいことをすると思いますか?
簡単に言ってしまえば、
その方が会社にとってコスト削減が出来るのと、
「うちの会社は福利厚生が良い」という錯覚で、「社員の満足度」を上げることが出来るからです。
特に「ベネフィット・ステーション」に入っているけど、企業側からポイントが付与されない会社が、たまにありますけど、
これなんて悪質な「印象操作」です。
調べれば分かりますけど、「ベネフィット・ステーション」って、会社の負担は社員1人あたり月600円~ですからね。会社側にとっては、めちゃくちゃお手軽です。
あんなの、色々なレジャー施設やレストラン等の割引と言っても、実態は、「割引クーポンでお客さんを呼びたい企業のプロモーション」に乗せられているだけです。
あれが果たして「福利厚生」なのか?というと、私は疑問に思います。
まだ「昼食代補助」とかのほうが、社員にとっては、よっぽど良いです。
「弊社の福利厚生はベネフィット・ステーション」なんて言ってる会社は、そんなことより給料上げてくれよ、と思います。
まあ、それが出来ないから誤魔化しているんでしょうけど。

最後に:
さて、色々言いましたが、
今日ご紹介した
福利厚生 ①~⑥ のほぼ全て、
「給料が高ければその方が嬉しい」
ことばかりです。
はっきり言いますが、
「福利厚生」は「会社側の都合」の、
ただの「調整弁」です。
ぶっちゃけ、結論としては、
「福利厚生」って、
働く側にとっては
あまり意味ないです。
会社都合の、
自社を良く見せるためのCMに惑わされず、
きっちり「給料の高い」会社に、
入りましょう。
どうやったら給料上がるかって?
この辺りを読んでみてください。
「安斎響市の転職プロジェクト」
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お相手は、安斎 響市でした。